「転機」ということについて

2008年11月25日

僕の場合、普段の生活をごく普通にしていると、自分の今の生活というのを客観的に見るきっかけというのがなかなかない気がします。確かに日常的に、嫌なこと、傷つくことというのはボチボチあって、その都度「今のままでいいのかな〜」などと漠然と考えることはあります。でも、そういった些細なことでいちいち立ち止まって考えていては、プライベートにも仕事にも支障をきたしてしまいます。面倒くさいことには目をつむって、人生を楽しまなくてはいけないですからね。

ところが、何年かに一度、自分の気持ちがものすごく動揺する出来事が起こったりします。大切な人の死、離婚、失恋、失業、地震や火事、車の当て逃げ、不慮の事故、怪我、病気、転勤…などなど。なかなか自分でコントロールの及ばないことであり、かつ、頻繁に起こることではないから、そういうことが起こると、かなり動揺してしまう。もちろん、どういうことがきっかけになるかというのは、個人レベル、その時の状況などで、全く違うと思うのですが。

いずれにしても、それらが原因となり、気持ちに動揺が起こり、その後、不安や喪失感が襲ってきます。すると、急に自分の今置かれている状況というのが鮮明に見えてきたりします。苦しい経験、辛い経験をした時、今の現状がそれを支えてくれるかどうか。仕事、人間関係、家族、パートナー、趣味などが、自分の喪失感を埋めてくれるのかどうか。そういった基盤が強固であれば、そのままで良いのですが、普段から現状に疑問や不満を持っていたりした場合は、それをきっかけに一気に吹き出す場合もある。そして自分の現状について、考えざるえない状況になる。

これが転機というものなんじゃないかと思うようになりました。

転機のきっかけは自分で作り出すもんじゃない。外から何らかの形で、刺激があって、その刺激が自分にとって大きかった時、潜在的にあった問題点が明らかになる。そして、それにどうやって対応するか考えざるえなくなり、現状を変えるためのアイデアを練り始め、実際に行動を起こす。

最近、「Sleepless in Seattle(邦題:めぐり会えたら)」を観たのですが、トム・ハンクスが演じる主人公は、奥さんの死をきっかけに、長年住んでいたシカゴを離れ、シアトルで新生活を始めます。彼のシカゴの同僚は、カウンセリングや新しいパートナー探しの話などをして彼を元気づけようとするのですが、彼には全く効果がありません。結局、彼は大きな変化が必要だということで、一人息子とともにシアトルへ引っ越します。引っ越した後ですら、二年間くらい、眠れない日々が続きます。死んだ奥さんへの気持ちから離れられずにいます。しかし、そんな彼を心配した息子が、とあるラジオ番組に電話をかけるところから、彼の新しい人生がスタートします。

彼の場合の転機は、最愛の奥さんの死でした。しかし奥さんを失った代わりとなるものがない。「時間が解決してくれる」ということをよく言いますが、彼は時間がたったとしても、現状のままでは喪失感は埋まらないのを知っていた。奥さんがあまりに素敵な人だったから、その代わりになる人なんてなかなか現れないというのがわかっていた。

だから、彼には大きな変化が必要だったんだと思います。場所を変え、新しい生活を始めようと行動していくことで、彼なりの新しい物語を作らなければならなかったんじゃないかと思います。死んだ奥さんの存在が大きかっただけに、彼女との思い出が残るシカゴを離れなければいけなかった。その喪失感、動揺を乗り越えるためには、思い切った変化が必要だった。

いろいろと共感することが多い映画でした。動揺することがあると、眠れなくなるというのもそう。僕は寝るの大好きだし、嫌な事はすぐ忘れようとするタイプだし、寝られないことは滅多にありません。だから、眠れなくなるほどの出来事というのは、僕の人生にとって非常に大きかったりします。

アメリカに来て十年目。そして日本語を教え始めて五年目(ボランティアやTAの時代も含め)。時期的に見ても様々なことを考え直さなければならない時が来ました。このままアメリカで日本語を教えていきたいという気持ちはまだ強いです。今まで積み重ねて来た経験を捨てるのにはかなりの覚悟がいります。でも、心細いアメリカでの生活で、大きく心が動揺することがあると、全てを投げ出してしまいたくなることがあります。やはり基盤となるものが弱い。だから、このまま教え続けていきたくても、何かを変えなければならない。だったら、何を変えなければいけないのか。今、これに取り組まなければ、またうやむやになって、数年間、問題を抱えたまま過ごさなくてはいけません。それだけはどうしても避けたいと思ってます。

ただ、考えているだけでは、何も変わりません。なので、少しずつ新しい一歩を踏み出していくことが大切なんでしょう。その現状を動かそうとする過程の中で見えてくるものがあるし、新しい人間関係というのも生まれてくるはずですからね。様々な行動を通じて、過去の自分、今の自分、そして未来の自分をつなげる、新しいストーリーを作っていければと思います。それがどんなことになるかは見当もつきませんが、それでいいんだと思います。行動を続けることで、どこかへ導かれていくんだと思います。たとえそれが僕の想像だにしなかったことでも、いいんだと思います。小さな自分自身が作る「未来の自分」にとらわれず、オープンな気持ちでこの問題に取り組んでいきたいです。

でもやっぱりキーワードは人なんだろうと思います。素敵な人との出会い。トムハンクスが演じた主人公を癒す事ができたのも、新しい出会いであり、人でしたからね。僕の場合もきっとそうなんじゃないかと思ってます。そんな人達とどこで出会えるのか、まだわからないけれど。

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